Delay in start-up 保険のマスタークラス

01 January 0001

(原文: Masterclass on delay in start-up insurance 29 March 2017 )

この保険は多くの名称で呼ばれ、さらにそれぞれに略語があるためややこしい。例を少し挙げるだけでもloss of anticipated revenue (LOAR)advanced loss of profits (ALOP)delay in start-up (DSU)などがある。本記事ではDSUの頭字語を使わせていただく。

どんな名称であれ、意図することは同じである。DSU保険は、デベロッパーやプロジェクトオーナーに、プロジェクトの建設段階における追加補償を提供する。DSU保険は、請負工事(および既設構造物)の損害によって工事遅延が発生した際に生じる利益損失を補償するものである。

損失利益を補償する代わりに、プロジェクトの追加資金や労働力の追加コストといった、新たに投入する対策を補償するように証券をアレンジすることも可能である。

何故DSU保険を手配するのか?

プロジェクトオーナーは、通常納期遅滞の補償を建設請負契約に頼る。同契約により、遅滞リスクは工事請負業者請負に回され、遅滞の結果生じる予定又は確定損害賠償額 は工事請負業者が補償することになる。

しかし、この種のリスク転嫁は通常条件つきで行われる。いくつかの修正されていない共同契約裁判所 (Joint Contracts Tribunal, or JCT) 契約は、ある特定の危険から生じる損失に対して救済を工事請負業者に提供する。このような状況下では、オーナーやデベロッパーは損失した収益に対する補償を得られない。契約上の保護が存続していても、工事請負業者が破綻申請してしまえばこれも無に帰する。

このような理由から、補償を提供するDSU保険に加入するオーナー、デベロッパー、投資家がますます増えている。

どのくらいの金額のカバーが必要か?

補償レベルを判断する際、プロジェクトオーナーはまず、補償期間の長さを考えるべきである(これは工期と混同してはいけない)。

補償期間というのは、保険契約において給付支払が行われる期間のことである。その長さは、大災害の損害による工事遅滞といった最悪の事態を想定したものであるべきだ。こういった内容は融資契約書において定義され得るが、竣工直前での重大な損失発生の結果を確定した上で決定されるのが最も望ましい。

多くのケースでは補償期間は、当初の建設期間より長くなるが、これは残存部撤去や改善作業設計、工事請負業者再調達、部品の再注文、必要な場合は計画書の再提出といった複雑な作業が追加で必要になるためである。

保険金額

補償期間が確定すれば、改定竣工日(および通常操業の開始日)までの補償期間中に生じうる損失を見積もることで保険金額を算出することが可能である。

上記に記述したとおり、損失には、粗利益の損失、追加資金調達コスト、予想収益額における利益の損失、代替の労働力にかかる追加コストなど、多くの費目がある。

損害規模を予測する際、予定又は確定損害賠償額が指標として使われることは良くあるが、これが雇用主の実際の損失を正確に反映しないかもしれない重要な理由がある。

例えば、商業上の理由により、リスクと報酬のバランスの観点から、予定又は確定損害賠償額を工事請負業者にとって受け入れやすい数字に引き下げることが必要な場合があるかもしれない。このような状況では、予定又は確定損害賠償額は潜在的損失を十分に補償することにならない。

損害が発生すると何が起こるか?

DSU契約は、工事期間中に発生した損害によって竣工遅滞が生じた場合に適用となる。保険会社は損害によって生じた遅滞のみを補償するため、プロジェクトの完了に遅れをきたした他の事象(工事請負業者の工事不良や設備納入の遅延など)が与えた影響も全て考慮に入れた上で、保険金の支払額が決定される。保険事故よりも、非保険事故の方が優先されることが多いため、正確で適正に文書化された保険契約のモニタリングが大切である。

建設請負契約上、プロジェクトオーナーが予定又は確定損害賠償額の請求について工事請負業者に対して償還請求権を持っている場合でも、保険金請求が確実に行えるように、保険契約を注意深くドラフトすることが必要である。

遅滞日数を免責の基準とするケースもあり、この場合短期間の遅滞は補償対象とならない。

保険証券では誰が補償されるか?

被保険者は通常、デベロッパーと貸し手に限定される。工事請負業者は潜在的な予定又は確定損害賠償額賠償責任のリスクを有するにも拘わらず、収益に関する被保険利益を持たないため、DSU契約においては被保険者となることができない。

しかし、だからといって工事請負業者が全く補償されないということではない。保険会社がプロジェクトオーナーやデベロッパーに代位した契約上の権利(例えば予定又は確定損害賠償額を請求する権利)を放棄することに同意すれば、DSU保険契約は手配可能である。これにより、定義された特定の危険のみの補償とは対照的に、オールリスク・ベースで保険カバーが機能するので、JCT契約上で通常提供される補償よりも追加的な補償が工事請負業者に提供される。

もちろん、オーナーやデベロッパーは工事請負業者に同権利放棄を認めたがらないかもしれない。その場合保険会社からの代位請求が、工事請負業者にとって依然リスクとなる。