メキシコ: 石油、天然ガス産業にとってロペス・オブラドール大統領政権が意味するもの

28 December 2018

原文: MEXICO: WHAT DOES A LÓPEZ OBRADOR PRESIDENCY MEAN FOR OIL AND GAS

2018年7月1日に行われた大統領選挙での勝利をうけ、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)氏は2018年12月にメキシコ大統領に就任する。大統領選でのAMLO氏の成功はメキシコ従来の政党政治との明確な決別を示しているものの、同氏は投資家に対し財政再建の責任を果たすとの確約をしている。しかし、電力やインフラ産業では契約停止リスクの増大に直面するだろう。

安全保障環境

選挙期間中、AMLO氏はカルテルに関連した犯罪に対する国民の高い不満を争点にしており、治安対策が政策の優先事項となる可能性が高い。 ドラッグカルテルが小規模グループに分裂している事から、縄張り争いの増加による犯罪が拡大している。2018年1月から6月までの間、メキシコでは組織犯罪関連の殺人が11,241件発生したと推定されており、2017年の同時期と比較し28%の増加となった。また、特急誘拐や恐喝がドラッグカルテルに替わる資金源として近年ますます増加している。

2017年には1,390件の誘拐が報告されており、2016年から22.9%増加した。AMLO氏はカルテル関連の暴力犯罪に対するメキシコの軍事的対応を段階的に廃止したいという意思を表明したものの、未だ暴力犯罪に対処するための政策を明確にしていない。そのため、中期的見通しとして、メキシコで事業を行う企業は社員や動産の安全性を確保するため十分な安全対策を引き続き行う事が必要となるだろう。

貿易環境

大統領選挙後、AMLO氏は様々な民間企業の経営者との会談に続き、汚職を根絶しこれまでの大統領や公務員への手当ての削減を誓う“緊縮政府”を発表した。それと同時に、同氏は中央銀行の独立性や変動為替相場制を尊重する旨の約束をした。このような措置は、反企業政策への不安を抱える投資家の懸念を緩和すると見られている。

しかし、AMLO氏は社会保障プログラムや教育、インフラへの歳出拡大も表明しており、これが政府支出の増大につながるだろう。その結果、2018年にGDP比0.6%と見込まれているメキシコの財政赤字は、2021年までに1.9%に拡大すると予測されている。

アメリカの経済成長は外貨流入とメキシコ製品需要の拡大を後押しするだろう。AMLO政権下で予測される公共支出の急増と併せ、向こう数年間、実質GDPの成長を加速させると見られており、2019年の実質GDP成長率は2018年の2.1%から2.8%に増大すると見込まれている。しかし、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉はメキシコ経済に著しい下振れリスクをもたらすだろう。

ドナルド・トランプ米国大統領は、2018年7月下旬、墨米間の大上段の議論が軟化する状況下、NAFTAの迅速な再交渉を望んでいると表明した。しかし、ますます高まるアメリカの保護主義の姿勢は、再交渉失敗のリスクを増大させるだろう。メキシコにとってアメリカは大きな貿易相手国の1つであり、アメリカへの輸出はメキシコの2017年GDPの12.5%を占めている。そのため、NAFTAの崩壊はメキシコにとって大きな経済リスクをもたらすことになりうる。

投資環境

選挙期間中に掲げた汚職対策の公約から、AMLO氏にはインフラ、電力産業で前政権が締結した契約を精査することが期待されている。これにより、中期で契約中断、解除のリスクが増大するだろう。例えば、AMLO氏は2018年7月23日、130億ドル規模の事業である新メキシコシティ国際空港を今後どうするかは2018年10月の国民投票で決定されると発表した。同発表後、同事業を管理する合弁会社は予定されていた様々な入札を一時中断した。これはメキシコの契約リスク増大を強調する出来事であり、インフラ、電力産業で議論を引き起こしている複数のプロジェクトもまた、国民投票の対象となる可能性がある。

AMLO氏やエネルギー相ロシオ・ナレ氏は電力産業の自由化を否定するものの、新政府は前政権で導入されたエネルギー産業改革案を全面的に覆すために必要な2/3以上の議席数を両院ともに獲得できない見込みである。しかし、政府はエネルギー産業に関する第二立法を可決または修正するために下院で単純多数をもつ見込みで、これによって複数の自由化政策が修正される可能性がある。

また、退陣するエンリケ・ペーニャ・ニエト大統領に対し、石油、天然ガス産業での3期目の許認可更新を停止するようAMLO氏が圧力をかけるリスクが高まっている。AMLO氏は選挙前から同措置を求めていた。

メキシコ: 石油、天然ガス産業に対しロペス・オブラドール大統領政権が意味するもの

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