先進国経済における政治リスクの高揚

28 January 2019

原文: POLITICAL RISKS ON THE RISE IN ADVANCED ECONOMIES

最近のアルゼンチンやトルコの財政的不安定は新興市場に耳目を集める契機となったが、適切な保険による補償は、多くの先進国経済においてもまた政治的リスクを緩和することが出来る。2008年の金融危機の影響が、先進国における政治の主軸を侵食し続け、経済的自由主義に対する不満の炎に油を注ぎ続けている。イギリスでは、早い時期に総選挙が行われる可能性があることから、公共企業が国有化されるリスクが高まっており、イタリアはEUが要求する歳出計画の改訂に反抗している。政治の不確実性や自動車関税の脅威がドイツの見通しに重くのしかかっており、アメリカでは政治的動機を背景とした暴力が発生する可能性がアメリカで高まると見られている。

イギリス:公共企業が国有化のリスクに直面している

テリーザ・メイ首相の保守党政府とEU間で合意に至ったBrexit協定の草案が英国議会で承認されるかどうかは非常に不確実である。もしもこの草案が議会の過半数の同意を得ることが出来なかった場合、2022年まで予定されていない総選挙が2019年に行われる可能性がある。労働党は保守派のすぐ背後で選挙活動を行い、水道・エネルギー産業、鉄道・英国郵政の国有化を計画している。労働者たちは、投資家は議会によって決められた金額により補償されるだろうと主張しているが、これが市場価値を下回るかどうかは定かではない。イギリスと二国間投資協定を結ぶ国家の投資家たちは、補償金額が不十分であった場合にはより強力な法的保護の利益を受けられると考えられるが、多くの利害関係者たちは人権法を通して、あまり明確でない法的異議申し立てに頼らなければならないだろう。

イタリア:予算に関する論争がエスカレートしようとしている

イタリアの反体制政府は欧州委員会が要求する歳出計画の改訂に留意することを拒否しており、ローマに対して財政上のペナルティが課せられる可能性が上昇している。20186月に連合体が形成されて以降、右派連合とEU懐疑主義の五つ星運動は緊縮財政措置を覆し、イタリアの停滞した経済を活性化させることを要求している。連合は税率の一定の引き下げ、賃金保証の提供、定年年齢の引き下げを提案しているため、2019年の対GDP比財政赤字についてより緩い2.4%を目指している。

しかし、公共支出の増加はすでに130%を超えている公的債務のGDP比率に更なる負荷をかけるとして、ブリュッセルは201810月のイタリア政府の予算草案を棄却した。支出の増加は高い経済成長を促す一方で、増加する借り入れのための費用によって相殺されると予測される。イタリアの債務のうち36%以上は今後3年間で満期を迎えることとなっており、そのうちの大部分は支払いの繰り延べをしなければならないだろう。歳出の増加がなかったとしても、イタリアの資金調達コストはヨーロッパ中央銀行が量的金融緩和政策を終了したことによってすでに上昇へと向かっている。

イタリアはその提案に対して大きな変更を行うことを拒否しており、結果として、EU委員会はローマに対して、まずGDPの0.2%を手始めとする予算違反のペナルティを課すことになるだろう。もしもイタリア政府がEUからの圧力に屈して提案した歳出を削減すれば、予算への引き続くコミットメントが国家信用リスクを引き上げると同時に国民の不安を誘発することになりかねない。

ドイツ国境とアメリカにおけるリスク

政治的リスクはその他のいくつかの先進国でも上昇している。ドイツの与党は最近行われた選挙で意にそぐわぬ結果となり、アンゲラ・メルケル首相は任期末の2021年の再選を望まないと発表するに至った。政治の主軸は近年弱体化しており、早期の選挙が要求されるだろう。更に、アメリカがEUからの自動車の輸入に25%の関税を課すリスクが高まっており、これはドイツの自動車産業に特に重大な影響を与えることになるだろう。

アメリカでは、201811月の中間選挙で民主党が再び衆議院の過半数を奪還した。民主党は衆議院での支配力を行使してドナルド・トランプ大統領に対する査察を開始すると見られ、これは不満を持つ右翼の過激派による銃撃活動のリスクを引き上げる可能性がある。大規模な抗議活動は一年間の見通しにおいて大都市で引き続き行われるとみられ、左右両派の過激派による火器を用いた攻撃は2020年の大統領選挙に向けて増加し続けると見られる。